So-net無料ブログ作成
検索選択

クラシック近鉄特急が往く [鉄道の旅]

近鉄特急のアイデンティティを感じる旅

RIMG0702 (480x360).jpg

近鉄吉野線もめでたく完乗し、帰路は近鉄特急に乗ろうと思います。久し振りの近鉄特急、今回のお楽しみの一つでもありました。
14:22吉野駅に到着し、折り返しは14:34の特急でと思っていましたが、車両は生憎16600系でした。近鉄の汎用特急車の最新バージョン、Aceと呼ばれる車両の狭軌版です。新車好きを自認する私としては本来喜んで乗るべき車両ではありますが、今回狙っていたのは別の車両です。乗りたかったのは16000系、そう吉野特急では最古参の車両です。

RIMG0701 (480x360).jpg
▲丁寧に使われていることが窺えるツヤツヤの車体

現在の近鉄特急のラインナップでは頂点に君臨する「しまかぜ」、名阪間の花形アーバンライナーなどと較べると16000系はデビュー後既に半世紀、本来ならハズレといわれても仕方のない車両です。近鉄の異端である狭軌線の吉野特急においても「さくらライナー」(26000系)、Ace(16600系)、ACE(16400系)、サニーカー(16010系)といった後輩たちと較べると16000系は確かに骨董品的存在です。なにしろ標準軌で同世代の新エースカー(11400系)はとっくに引退していますから。16000系も既に初期の車両は廃車、或いは大井川鉄道に譲渡されており残るは3編成。吉野に来るまでの間すれ違う特急も新型車両ばかりで16000系がもはや主役の座を失っていることが窺えました。しかし、私は、この16000系世代の特急車には近鉄特急草創期のアイデンティティを強く感じるのであります。それ故、今回乗るなら16000系と心に決めていたのであります。

RIMG0695 (480x360).jpg
▲杉の産地らしい駅名標

1本見送ったがために駅前の茶店で想い出に残るコーヒーブレークを過ごして吉野駅に戻って来ました。(←前記事ご参照) 薄暗いホームからこちらに顔を向けているのは正にその16000系。窓口で阿部野橋までの乗車券、特急券1480円也を購入、はやる気持を抑えつつ改札を抜けます。

RIMG0697 (480x360).jpg
▲ホームにはベテランの顔が

吉野特急というと「さくらライナー」を除いて2連のコンパクトな姿を思い浮かべますが、目の前にいるのは希少な4両固定編成です。9編成製造された16000系のうち4両固定編成で登場したのは唯一この16008Fだけなんだそうです。

RIMG0698 (480x360).jpg
▲行先標には「京都連絡」の文字が

ピカピカのボディは車齢を感じさせないほど美しくメンテが施されています。側面から屋根にかけてのカーブは優美なラインを描き上品な印象を与えます。そして、屋根上にずらりと並ぶ小型の冷房装置と大型固定窓は近鉄特急車の証。しかし、特急車としてはなんとも飾り気のないマスクはさすがに時代を感じさせます。今時の車両なら標準装備の種別・行先の表示装置もなく、種別は電照式のヘッドマーク、行先は助士席窓に行先標が表示されているだけ。側面には号車札と座席番号表示がペイントされているだけです。特急表示、私は以前の扇形の方が好きなんですけど・・・・。

RIMG0700 (480x360).jpg
▲スリムな折り戸に特急らしさが

そして、なにより近鉄特急車らしさを感じさせるのは言うまでもなくボディに纏った濃青と橙ツートンの近鉄特急色でしょう。国鉄特急色と並ぶ昭和の鉄道車両におけるエクステリアデザインの傑作だと思います。
前置きが長くなってしまいました。そろそろ車内に入りましょう。これも今時にしては珍しい折り戸に迎えられて乗車します。


RIMG0703 (480x360).jpg
▲リクライニングシートがずらりと並ぶ客室

車内はリクライニングシートが整然と並ぶオーソドックスな造り。抜本的な更新工事が行なわれたのかくたびれた感じは全くありません。実は私が初めて乗った有料特急というのがこの16000系。私は幼稚園児、16000系がデビュー間もない頃のことです。エンジ色のシートに掛かった真っ白なカバーがなんとも贅沢な印象でした。現在のインテリアはその頃と比べるとソフトな感じに改められています。
そして、なによりも変わったのがデッキの設置。新製当時は他の近鉄特急車同様ドア部分と客席に仕切りがないデッキレス構造でした。流石に不評なのかスナックカーなどとともにデッキが設置されデッキレスは消滅しました。平成の御代に入ってデッキレス特急を新造したJR某社もありますが。


RIMG0704 (480x360).jpg
▲ピッチが広い最前列のシート

デッキレスの名残か最前列の座席はやたらとピッチが広いのが目立ちます。新幹線などでこの座席に当ると足が投げ出せず窮屈な思いをするもんですが。
指定された1号車のシートに着席すると掛け心地はやや柔らかめ。最近の固めのシートに慣れている身には少々頼りなく感じますが、悪くはありません。テーブルはアームレストに収納されており、背面テーブルは装備していません。これもかつての近鉄特急のアイデンティティですが、最近の車両には設置されているようです。


RIMG0705 (240x180).jpgRIMG0706 (240x180).jpg
▲シートカバーは使い捨て?

15:04、静かに吉野駅を発車。私が乗った1号車には他に1名だけという有様。まあ、吉野駅の閑散とした状況から十分に想像はできましたが、乗り物というのはやはりある程度の賑わいがないと様にならないですね。この後の停車駅に期待しましょう。

RIMG0709 (480x360).jpg
▲吉野口で僚友と顔合わせ

その停車駅ですが、吉野線内はやたらと停まります。吉野―橿原神宮前間の14駅のうち通過するのはわずかに6駅だけ。隔駅停車どころではありません。おまけに曲線の多い線形に阻まれてかスピードはさっぱり上がらず。橿原神宮前までの25km弱を39分かけて辿ります。
橿原神宮前では「京都連絡」だけあって京都行き特急に乗り換えるのか大きな荷物を抱えた人が2名ほど下車。かわって乗り込んで来た少年が「またコイツや・・・」と古参車両に不満そうであります。


RIMG0712 (480x360).jpg
▲駒ヶ谷駅前にはチョーヤ梅酒本社が

南大阪線に入ってからはうって変わって特急らしい走りに。リクライニングシートに身を預け静かに響く直流モーターの唸りに耳を傾けます。高田市、尺土と停車すると後は終点大阪阿部野橋まで約30分ノンストップ。
大阪との府県境を越えると車窓にはブドウ畑が目立ち始めます。あまり知られていませんが、大阪府はかつてブドウの栽培面積日本一だったこともあるブドウの名産地。今も河内ワインは根強い人気があるそうです。そんな土地柄を象徴する会社が駒ヶ谷駅前にあります。チョーヤ梅酒㈱。今では梅酒のブランドとしてお馴染みですが、発祥はブドウ酒メーカーです。


RIMG0713 (480x360).jpg
▲大阪市内の高架線を快走(今川)

車両基地があり長野線が合流する古市を過ぎると車窓は住宅と工場で埋め尽くされます。藤井寺、松原は現役時代中河内地区の営業を担当していたこともある私にとっては懐かしい土地でもあります。大阪市内に入り高架線を快調にとばしあべのハルカスが見えるともう終着阿部野橋、ハルカスの根本に吸い込まれるようにして1時間17分の近鉄特急の旅が終ります。
16:21、大阪阿部野橋着。


RIMG0715 (480x360).jpg
▲折り返し再び吉野へ

降りようとして席を立ってびっくり、1号車の乗客は十数人と思っていたのですが、通路にはずらりと行列が。先頭車寄りにある改札口を目指して後方の車両の乗客が1号車のドアに詰め掛けているんでしょうが、意外に多くの利用客が乗っていたのに驚いたのです。オフシーズンの吉野特急にもそれなりの需要があるわけですね。

近鉄は特急網の再構築を経営戦略に挙げています。目減り傾向にある通勤輸送に替わって特急網を充実させ利用者の増加を図るんだそうです。もちろん車両更新も戦術の一つとして計画されていることでしょう。そうなれば真っ先に淘汰されるのは標準軌線では元スナックカー、狭軌線ではこの16000系と考えて間違いありません。もはや風前の灯となった国鉄型特急同様、近鉄特急網の構築を支えて来た車両たちの去就からも目が離せません。


nice!(28)  コメント(16)  トラックバック(0) 
共通テーマ:旅行

nice! 28

コメント 16

硬券屋

相変わらずツボを押さえた記事ありがとさんです。学生時代によーく乗りました? そう遠くないうちに引退でしょうか。残念ですけど。涙あり笑ありの近鉄特急でしたが最近は全然縁がないのですよ-T^T 次は大垣発東京行き快速347Mの想い出話でもお願いしますm(._.)m
by 硬券屋 (2015-02-12 17:39) 

まるたろう

なるほど、古い車両から淘汰されるのは耳朶の流れでしょうけど、
寂しいものがあります。
近鉄の車両も自分、撮っていないものが多いで、記録の意味で
少しずつやっていきたいですね。
by まるたろう (2015-02-13 06:44) 

のり

まだお元気で活躍中だったのですね。
近鉄特急がネットワークを形成し始めた頃の名残を留める逸品車両だと思います。
吉野特急といえばこれが真っ先に浮かびます。
随分長い間ご無沙汰ですが、車内がとても豪華になっていますね。
大型の「特急」は、私も大好きでした。
行先表示と京都連絡の表示が、差し込み式ではなくなっているのですね。
当初はリクライニングではなく回転クロスではなかったかと記憶していますが…。

吉野までの乗車は、「旅」を感じさせてくださいました。亡き父も「この特急は値打ちあるなぁ」と申していたのを覚えています。
by のり (2015-02-13 06:57) 

サットン

硬券屋さん

ツボに嵌りましたか! 嬉しいですね♪ まあ、この車両は我々とほぼ同世代ですのでシンパシーを感じるのかも知れませんね。消え行くものへの哀感と言うか・・・・。
近鉄特急には様々な思い出がおありのようですが、沿線にお住まいだったのでしょうか?
大垣夜行には何度となくお世話になりましたが、紙焼写真しかありません。
by サットン (2015-02-13 11:08) 

サットン

まるたろうさん

私は決してノスタルジー派ではなく、どちらかというと新しいもん好きだったんですが、このところ齢のせいか妙に古い電車に惹かれるようになりました。昨年も神鉄の古参車両に魅了されたり。
近鉄の車両コレクション・・・私は既に諦めました(笑)
by サットン (2015-02-13 11:38) 

サットン

のりさん

近鉄特集にお付き合いいただきありがとうございました。
実は、クラシックタイプの近鉄特急には吉野線に行けば簡単に会えるだろうと思っていましたが、意外にも残り3編成になっていて1本見送って乗れたのはラッキーだったようです。
登場した頃のシートは確かにエンジの回転式で、後にリクライニングに換装されたようです。
この時代の車両のデザインは内外装ともに主張が込められているように思います。最近の真っ白けの特急車両って皆同じように見えてしまいます。
吉野からリクライニングシートに座っての1時間余り、車窓も変化に富んでいて旅気分が味わえました。機会があればシーズンを変えて訪れたいと思っています。
by サットン (2015-02-13 11:55) 

あおたけ

このカラーリング、そして貫通扉に掲げられた、
シンプルな「特急」マーク、
これぞ昔ながらの近鉄特急といったイメージで
シブカッコイイですね〜(^^)
昨年に大井川鉄道で同系に乗りましたが、
やはり本家は色つやがよくて、
特急としての貫禄が感じられますね!

でも、撮るなら古いの、乗るなら新しいの
というわがままな私。
乗るなら・・・さくらライナーを選んじゃいそう(^^;)
by あおたけ (2015-02-13 16:43) 

UZ

一瞬大井川鐵道のレポートかと思いましたが、近鉄でしたね。
今回乗車された特急の座席は以前のアーバンライナーのレギュラーシートとほぼ同仕様との事です。
背面テーブルはさくらライナーやビスタカーの更新車にも設置されています。近鉄も東武同様に背面テーブルは長年なかったようですが、あの東武のりょうもう号にもリニューアル車にも設置されたそうですので時代の流れを感じますね。
by UZ (2015-02-13 21:25) 

サットン

あおたけさん

そうなんですよ。これぞ近鉄特急!っていう車両に乗りたくて16000系を狙いました。最近の真っ白い特急車両ってどうも面白みがなくって・・・。
とはいえ、本来は新車好きの私のこと、途中で行き違ったさくらライナーにも惹かれたのは確かです。
大井川に移籍した車両は確かデッキレスなどの内装は以前のままだったかと。逢いに行きたい気もしますが、くたびれた姿を見るのはキツイかも。
by サットン (2015-02-14 10:13) 

サットン

UZさん

この車両、近鉄からはどんどん姿を消してしまい、今や大井川と数的にはどっこいどっこいになっているようですね。
シートは確かにちょっと古いタイプでしたが、綺麗で掛け心地も問題ありませんでした。インアームテーブルだと脚を組めないという欠点は確かにありますが。
「りょうもう」は今も急行のイメージが離れません。東武も特急間の格差が激しいですね。
by サットン (2015-02-14 10:25) 

京葉帝都

古参の車両をキレイに整備して走らすことによって、メンテナンス技術の向上と継承を図っているように思えます。鉄部の決定的な腐食や部品の製造停止などで役割を終えるのは避けられません。16000系は正面のパノラミックウインドウや裾絞りの車体、2色の塗り分けなど、登場した時代の優美さを残していますね。キハ82と共に近鉄特急は憧れの存在でした。16000系は橿原神宮前から阿倍野橋まで乗車したことがありました。デッキレスだったところが拍子抜けでした。そのカジュアルな開放感は、その後に登場したJR東海の373系に受け継がれたみたいです。
by 京葉帝都 (2015-02-14 21:02) 

QJ7000

サットン様、初めてコメントします。昔ながらの近鉄特急カラー、貫通扉の特急表示に助手席窓の行先表示、私も16000系は大好きです。年に1度、用があって奈良に行くのですが、乗り潰しを始める前は、この電車目当てに吉野線によく立ち寄ってから東京に帰りました。新型車と共通運用ですのでなかなか思うように乗車や撮影が出来ず、3回ぐらい行ってます。
それにしても少年の「またコイツや・・・」の言葉が、沿線で利用する方々にとってのすべてを表していますよね。Aceら新型と比べて座席は貧相すぎ。いつ全車引退が決まっても不思議でない車両ですので、私ももう一度行ってみたくなりました。
by QJ7000 (2015-02-15 09:32) 

サットン

京葉帝都さん

この車両のマスクは分割・併合が前提になる近鉄特急ゆえ平凡な貫通式になったんでしょうけど、ピラーレスのパノラミックウインドーが優美な印象ですね。精一杯オシャレしましたって感じです。
内外ともにメンテはかなり大掛かりに行なわれたようで、鏡のように艶やかな外板も取り替えられたのではないかと思います。
高品質な車両を造って長く使い続けるのは関西私鉄の伝統だと思います。最近の「車両も使い捨て」という潮流とは一線を画しているように思います。
by サットン (2015-02-15 12:43) 

サットン

QJ7000さん、いらっしゃいませ!

こんな感じで私もゆる~く乗りつぶしております。
16000系がお好きとのこと、嬉しいですね! 地味な車両ながら限られた条件の中で精一杯特急らしさを主張しているように感じます。まあ、一般の乗客にとってはハズレ以外のなにものでもないのでしょうけど。
限られたシーズン以外にはそれほど需要があるとは思えない吉野特急を2両ながら30分ヘッドで運転している姿は近鉄の特急網に賭ける意気込みが感じられますね。
by サットン (2015-02-15 12:59) 

労軽好人

昼間から宴会中にコメントです。私も先日16000系の撮影に行きました。貴重な存在ですね。
by 労軽好人 (2015-04-05 13:26) 

サットン

労軽好人さん

ご宴席からのコメント、ありがとうございます。ご盛会だったようで何よりです。
吉野特急にはまだまだコイツが頑張っていると思っていましたが、意外と数が少なく驚きました。でも、近鉄特急というとやはりこの色ですね!
by サットン (2015-04-06 10:49) 

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

この記事のトラックバックURL:
※ブログオーナーが承認したトラックバックのみ表示されます。
※言及リンクのないトラックバックは受信されません。

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。